シャブリ

ワインの性格は、葡萄品種、土壊、気候、そして人間の能力、この4つの基本的要素で決定されます。不変のものである葡萄品種と土壊が、ワインの基本的な性格を決め、年々変化する、北になるほど激しい差のある気候が、その年毎の個性をワインにもたらします。最後に人間の能力や気概といったものにより、さまざまなニュアンスが生まれ、同じ名前のワインであるにもかかわらず、いろいろな差を持つたワインが造られるのです。
葡 萄 品 種 : シ ャ ル ド ネ
すべての優れたブルゴーニュの白ワインと同じく、シャブリはシャルドネ種より造られています。シャルドネは抵抗カが強く耐寒性のある品種ですが、開花時期が早いので、霜による被害が極めて大きいのですが、一方この品種は早熟な為、栽培期間が短く終るという長所もあり、北部でシャルドネ栽培が盛んなのはその為でもあります。


【土壌】
シャブリ村一帯の土壌は、”arigilo-calcaire”と呼ばれる石灰質の粘土で、その地質は、アルプス山脈形成以前の1億8千万年前のものと調査されています。泥土は小さな牡蠣(かき)の殻の化石を大量に含んでいるので、土壌には石灰が極めて豊富で、その比率は50%に達しています。石灰質の土壌は薄い灰色で、ほとんど白に近い色をしています。石灰は多孔性なため水はけがたいへん良く、土の侵食が起こることはありません。

【気候】
基本的には半大陸的気候で寒暖の差が激しく、冬は長く厳しく、夏は猛暑となります。そして気温の差は年々異なっています。シャブリの畑のある狭いスラン・ヴァレー(谷〕は、三月終りから五月中旬まで霜の影響を受け易く、特にゲラン・クリュの畑が被害にあうことが多くあります。雨は、葡萄に含まれるジュースの量に直接関係しますが、一年を通して降雨量の差はほとんどありません。ー方、雹(ひょう)は局地的に多大な被害をもたらします。統計で見ても、5月 に平均3日の被害があります。葡萄栽培の北部限界に近いため、それぞれの場所の 気象条件 は大変重要になっています。シャブリにおける最高の畑は、最も日光を受ける、スラン川沿い右の南西向き斜面にあります。ゲラン・クリュ畑は、極めて険しく長い斜面にあります。ブルミエ・クリュ畑は、川沿い左、南東向き斜面にあります。多少ながら、こちらのほうが日照時間が短くなっています。

【霜対策】
散水法と、ヒーターを使う方法が取り入れられています。散水法とは、水は0℃で凍るという原理を利用したもので、葡萄の木に水をまき、葡萄を保護する氷の膜を造る方法です。霜により気温は−5℃まで下がりますが、葡萄は氷で保護されて被害を受けません。散水は、気温が0℃になったとたんに始められなければならず、また0℃あるいはそれ以下の気温が続く限り、散水を続けなければ効果はありません。スプリンクラーが遮られたり、風が強く吹いて効果ある散水ができなかったりすることも頻繁にあります。伝統的なコンロは、もう使われておらず、燃料タンクに連結されたバーナーを使った自動暖房システムも取り入れられています。この方法はより効果的で、信頼が置けると見なされていますが、問題は大変費用がかかるという点で、燃料費はむらろんのこと、ひとつひとつバーナーを点火するため、1 ヘクタ―ルに2人は必要で、そのための人件費もかなりの額になります。

【葡萄栽培】
シャブリではー般に1 へクタールに付き、5,500本から6,200本の苗が植えられます。苗の刈り込み方法は、”double guyot”と呼ばれ、1本の苗で2本枝を残し、 同じ方向にそれを曲げておく方法です。この刈り込みは、葡萄の生産高を左右する決め手となりますが、それは生産者の良心いかんによるものです。若い樹や古い樹で刈り込み方法も違ってきます。

【ワイン醸造】
原料は同じ葡萄、そして製品は同じ名のシャブリと、出来るものは決っていますが、いろいろな生産者によるそれぞれのワインのスタイルや性格のさまざまなニュアンスは、その生産者の製法、工程、そして持輸から生まれるものです。葡萄の茎は除去せず、房ごと圧搾されます。生産者の多くは、シリンダ-圧搾機を使います。その後、葡萄汁が、自然に澄んでから、上澄み液が発酵桶に入れられます。

【発酵】
殆どの生産者は、ステンレスの桶でワインを発酵させますが、僅かながら伝統的な木樽での発酵にこだわる生産者もまだ残っています。木樽での発酵には、不利な点が極めて多く、樽の洗浄や管理など大変不便で難しいものになっています。また、温度管理も不安定で、セラーや桶の温度は簡単に変えられますが、一旦発酵をはじめた木樽の中の葡萄液の温度は容易には下げられません。しかしながら、木樽発酵はワインの品質を向上させると信じ、こういった手間もその甲襲があると、特にゲラン・クリュの場合に多く、木樽を使う人もいます。 第ニ次発酵であるマロラクティック発酵を制御し、酸を軽減することにより、シャブリの基本釣な品質が飛躍的な向上を遂げました。

【補糖】
シャブリを造るにあたり、補糖は大変重要な要素となっています。ワインのバランスを良くするためにアルコール分を高める、そのために補糖は行なわれています。地理的にも、気候的にも、葡萄栽培の北限近くに位置するシャブリでは、補糖が酢可されています。

【冷却処理】
瓶の中で、結晶が沈殿するのを防ぐために、この10年の間に開発された方法が冷却処理です。すべてのネゴシアンがこの方法を使っています、また個人生産者の中にもこの方法を取り入れる者が増えています。8日間ワインを−4℃から−5℃に冷却L,その間に現れた結晶を、フィルターにかけて取除くというものですが、木樽を使っている生産者には、冷却処理は必要ありません。なぜなら、例年、冬のー番寒い時期に自然結晶がみられ、わぎわざ人為的に処理する必要がないからです。

【熟成】
いろいろな生産者のシャブリのそれぞれのスタイルは、正にこの熟成に大きく影響されています。熟成させるかさせないか、あるいはステンレス桶を使うのか、木樽を使うのか、もし木樽を使うならぱ、新樽か古樽か、樽熟成を長くさせるか、それとも早く瓶結めして瓶熱させるか、というようにさまぎまなヴァリエーションがあります。酸化を防ぐのは、白ワイン造りにおいて原則とされています。木樽で熟成されるワインは、ほんの微量ながら木の壁を通して呼吸、つまり酸化しています。それが、良い結果をもたらしているのか、悪い結果をもたらしているのか論点となっています。若くフレッシュなスタイルのシャブリがこれからの主流だと考える醸造学校では、木樽使用を全くの無駄としています。一体、オーク樽というものが、どんなに微量であろうと、れはシャブリのようなワインに適さない邪魔になるだけの物質で、ワインが木に触れたりするとそのワインのフレッシュな若さが消えてしまうと懸念しているからです。一方、伝統的な生産者は、ワインを新樽に4ヶ月 から5ヶ月寝かせます。そして木樽は4年毎に新調されます。ステンレス桶での熟成では、木樽での熟成で得られる自然のアロマが生まれません。それは、殆ど感じ取ることのできないほどのゆっくりとした酸化によっておこるものです。加えて、木樽で何ヶ月 間か寝かせられるとワインは自然に澄んでいきます。それにより必要以上に濾過することもありません。新樽で熟成させるワインには、それなりの重さと性格がないと樽香に負lナてしまいます。しかしながら、木樽を使ってこそ得られる、穏やかな酸化があり、それによってワインは成長するのです。木樽熟成のワインは、ゆっくりと成熟し寿命が長いのです。言い換えれば、より優れたワインであるというわけです。

【優れたシャブリとは・・・】
では、一体なにがシャブリのあのたとえようもない、火打石のような味わい、堅い酸味、微かな果実味を産み出しているのでしょう。葡萄品種と土壌の独特なコンビネーションが基本的な性格を造っているのは間違いありませんが、ワインの品貿を決定するにあたって、生産者の役割というものは不可欠です。なにより、彼らのワインに対する愛情と献身、それがー番大きな課題なのです。いろいろな醸造法が生まれ、シャブリもふたつに分かれました。若くてフレッシュ、花のようなシャブリが良いか、豊かでより複雑なオーク樽熟成のシャブリが良いのか、それは個人個人の好みの問題といえましよう。

【シャブリには、次の4つの品質等級があります。】
★Chahlis Grands Cru:シャブリ特級銘柄 (約90ha)
シャブリ特級銘柄の畑は、シャブリ村、フィエ村、ポワンシ―村に含まれるプランショ(Bhnchots)、ブ―グロ(Bourgros)、レ・クロ(Les Clos)、グルヌイユ(Grenuilles)、レ・プルーズ(Les -Preuses)、ヴァルミュ―ル(Valmur)、ヴォーデジール(Vaudesir)の7ケ所に限られます。さらに特級になりえるためには、果汁の糖分が1リットルにつき、最低187g有すること、つまり、アルコ―ル度11度に達するための天然の糖分をもつことが義務付lナられています。また、1ha当りの生産量が45ヘクリットルをこさないことも条件とされています。
★Chahlis Premier Cru:シャブリ1級銘柄(約450ha)
シャブリ1級銘柄の畑は、モン・ド・ミリュー(Mont de Milieu)、モンテ・ド・トネール(Montee de tonnerre)、ヴァイヨン(Vaillon)、ヴォグロ(Vosgros)、など40ケ所あり、最低アルコール10.5度、1ha当りの生産量が50へクリットルをこさないことが条件とされています。
★Chahlis:シャブリ銘柄(約1350ha)
シャブリ栽培地域に散在する19の村のうち、シャブリになり得る条件を満たした区域にのみ産します。最低アルコール度10度、1ha当りの生産量は、50ヘクリットルをこさないことが条件とされています。
★Petit-Chahlis:ブチ・シャブリ銘柄(約110ha)