毛細血管の働きを活性化する日本酒。肩こり、冷え性、偏頭痛やストレス解消に効果
 お酒を一気に飲むと顛色が青くなり、ゆったりくつろいで飲むと赤くなる・・・誰しも思い当たるこの現象、実は血管の収縮と拡張によるものですが、お酒のどの成分がどう作用するのか、これまでそのメカニズムは解明されていませんでした。
 先頃、愛媛大学医学部の奥田拓道教授の共同研究チームによる「日本酒および酒粕に含まれる機能物質の研究」で、日本酒の成分には血管拡張作用があることなどがわかりました。
 アルコールは、体内でアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに分解されます。奥田教授の研究チームは、ネズミを使った実験から、アルコールが血管、とくに細動脈を収縮させ、逆にアセトアルデヒドが血管を拡張させる作用を持つことを確認しました。
 これまで脳内の情報伝達を阻害する恐れがあるとされてきたアセトアルデヒドに、プラスの作用を見いだす画期的なものです。
 「一気飲みで顔色が青くなるのは、血中のアルコール濃度が高くなって血管が収縮するため。ゆっくり飲めば、アセトアルデヒドが血管を広げて血流をよくするため顔が赤くなるわけです。この結果からも、アセトアルデヒドができやすいように、くつろいで血管の収縮を抑えるような飲み方が望ましいですね。」 
 しかも、奥田教授は「アセトアルデヒドの血管拡張作用は、血中のアルコール濃度がかなり高くなっても変わらないはず。」と指摘。酒飲みにはうれしい結果となっています。
 以上はアルコール飲料全般にいえる効果ですが、注目したいのは、今回の実験で、日本酒の中にアセトアルデヒド以外にも血管の拡張を促す物質があることが判明したことです。
 そのひとつが、アデノシン。核酸の一種で、生物のRNA(DNA<遺伝子>のメッセンジヤー)の中に含まれています。
 日本酒と赤ワイン、焼酎、ウイスキーそれぞれについて、1ml中のRNAの含有量を調査したところ、どちらも日本酒に圧倒的に多量に含まれていたのです。血管は、強い驚きや心配事、寝不足などのストレスが加わると収縮します。これは、血管壁に沿って分布している交感神経の末端から分泌されるノルエピネフィリン(ノルアドレナリン)というホルモンの作用によるものです。
 そこで、血管に同量のノルエビネフィリンとアデノシンを振りかける実験を試みたところ、収縮はまったく起きなかったのです。 
 「このことから日本酒は、アセトアルデヒドだけでなく、ノルエビネフィリンによる血管収縮を阻止する作用も備えており、しかもその効果は、アデノシンの含有量から考えて、どのアルコール飲料よりも高いことがわかります。
 激しいストレスが加わった時に日本酒を飲めば、ストレスで収縮した血管をアセトアルデヒドとアデノシンが拡張して血液が流れやすい状況をつくってくれるというわけです。」
 今回明らかになった血管拡張作用によって、日本酒には入浴やマッサージと同じように筋肉のこりをほぐす効果があり、とくに毛細血管の働きを活性化することがわかりました。
 奥田教授は、「日本酒をゆっくり飲んで血行をよくし、末梢循環を促進することで、ストレスはもちろん、更年期に起きやすい肩こり、冷え性、偏頭痛などの改善につながるはずです。」と、日本酒の健康効果を強調されました。
 また、酒粕の成分の中に、がんに対する抵抗力を持つ作用があることも確認できました。そのひとつが、NK(ナチュラルキラー)細胞の活性化作用です。
 NK細胞というのは、血液中にあつて、体内に侵入した異物を撃退するリンパ球の一種。がん細胞と正常な細胞とを見分け、がん細胞だけを殺す働きがあります。
 奥田教授のグループは、酒粕の抽出液を、ネズミの脾臓から採取したリンパ球に加え、がん細胞を殺す作用が増強されるかどうかを実験。その結果、酒粕は0.1mg/mlの濃度でNK細胞の活性を明らかに高め、がん細胞を殺す働きが増すことがわかったのです。
 「10倍の1mg/mlでは、NK細胞の活性はさらに高くなりました。これらのことから、酒粕ががんになりにくい体質づくりに役立つ可能性を示していると思います。」
 また、酒粕にはがんによる病的な「やせ」を防ぐ作用があることも判明しました。
 がん細胞から分泌されるトキソホルモン−Lという毒素は、体内の脂肪細胞に作用して、中の脂肪をどんどん分解し、さらに脳の満腹中枢を刺激して食欲を低下させます。そのために、がんになると急激にやせてしまうわけです。
 ところが、酒粕の中には、この毒素の働きを阻害するグルコサミンという物質が含まれていたのです。がん毒素の働きをストップできれば、がん患者の急激なやせと、それに伴う体力の低下を防ぐのに大きな役割を果たしてくれるかもしれません。さらに酒粕には、糖尿病や肥満など成人病の予防や治療を効果的にする物質があることも、実験で解明されています。さらに酒粕には、糖尿病や肥満など成人病の予防や治療を効果的にする物質があることも、実験で解明されています。
 「糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きが低下することで、体内での物質合成と分解がうまくいかなくなることからおこります。
 われわれが酒粕の抽出液を脂肪細胞に作用させたところ、脂肪の分解のみを抑制して血糖値を下げるインスリン様の物質が含まれていることがわかったのです。
 そしてこのインスリン様物質の中には、RNA由来のアデノシンのほかにDNA由来のデオキシアデノシンも含まれていました。」そしてこのインスリン様物質の中には、RNA由来のアデノシンのほかにDNA由来のデオキシアデノシンも含まれていました。」
 健康を維持する大きな力をまだまだ秘めている日本酒。先ほどのグルコサミンの免疫力に着目して、ヨーロッパではすでにグルコサミン単体でリウマチの薬が開発されているほど。今後の研究次第では、日本酒の新たな効果・効能が期待されています。

日本酒が、がん培養細胞の増殖を抑える
酒はその国の文化の所産です。また医学的にみても、適量の飲酒は胃液の分泌を促して食欲を刺激し、さらに善玉コレステロール(HDL、高密度リボ蛋白)を増やして心筋梗塞や冠状動脈疾患を予防してくれます。最近の研究では、老化や痴呆の防止にも効果があることがわかってきています。
 そればかりか、がんの抑制にも効果があるという驚くべきデータも得られたのです。
 世界にさまざまな酒がある中で、とりわけ日本酒は、アルコールのほか有機酸、糖分、アミノ酸、ビタミンなど100種類以上の微量成分が含まれています。疫学的研究やがん細胞の増殖抑制実験で、これら日本酒の成分ががんの死亡率やがん発生のリスクを軽減するという研究の成果が相次いでいます。ここでは日本酒の発がん予防効果を中心にお話ししたいと思います。
 日本人の飲酒率は近年、急激に上昇していますが、肝硬変、肝がんの死亡率は世界のうちでむしろ低率国群に属しています。
 ただ、同じ国内でも、日本酒の消費量が多い東日本地域のほうが、西日本に比べて肝硬変や肝がんによる死亡率が低いのです。厚生省の資料によると、戦後の1969年〜1983年までの約15年間における「肝硬変・肝がんの性別・都道府県別標準化死亡比」は、両疾患とも性別に関わりなく「西日本に高く、東日本に低い」という地域差をはっきりと示しています。この地域差は肝がんよりも肝硬変で大きく、男性の中高年齢層ではいっそう明確になっているのです。
 日本の肝硬変の主な要因は肝炎ウイルスとされ、欧米とは対照的にアルコールに起因するのは10%程度といわれています。その上、ウイルスの地域分布に東西間の差はとくに見られていません。
 ここで、私たちは、最近10年間の肝硬変による標準化死亡比を都道府県別・酒類別に詳細に観察してみました。その結果、日本酒の消費量と肝硬変は、男女とも危険率1%の有意の負相関を示したのです。つまり日本酒を飲んでいる人は、肝硬変による死亡の危険がきわめて少なくなるという数値です。肝がんでもほぼ同様でした。
 これを踏まえて、さらにわれわれは日本酒の成分の生物活性についても実験を行いました。実験では、日本酒から得られた成分そのままの抽出試料と、濃縮試料の2種を用い、5段階の濃度に調整。それを膀胱がん、前立腺がん、子宮頚がんそれぞれの培養細胞プレートで24時間培養して細胞の変化を観察したところ、いずれの試料もがん細胞の増殖を抑制する細胞毒性作用が見られました。とくに64倍まで薄めた濃縮試料では、がん細胞の90%以上が凝縮または壊死していたのです。
 ウイスキー、ブランデーから得られた試料でも同様の実験を行いましたが、どちらも日本酒にあるようながんの増殖抑制効果はほとんど認められませんでした。
 また、日本酒に人工アルコールを加えると、その活性は3分の1ほどに低下しました。このことからも日本酒中の微量成分に量・反応の効果があることがわかります。
 さらに、日本酒のどの成分ががん細胞の増殖抑制を示したかを調べたのですが、日本酒に含まれるアミノ酸、糖類といった低分子量の成分にがん細胞の萎縮・壊死を示す効果があることも判明しました。
 こうしたいわば試験管中の実験結果が人体にはたして適用できるのかこれについてはすでに日本におけるがん研究の第一人者であった国立ガン研究所の故・平山雄先生が重要な研究結果を1978年に発表しています。
 これは、全国から選ばれた健康な成人26万5118人について、さまざまながんの危険因子を16年間にわたり継続観察した息の長い調査です。
 これによると「毎日喫煙・飲酒・肉食をし、しかも毎日緑黄色野菜をとらない。」グループががんの最高危険度を示しました。しかし、興味深いのは、「喫煙・飲酒・肉食を毎日せず、緑黄色野菜を毎日とる。」という節制型のグループはがん危険度は最低ですが、この群に「毎日飲酒する。」を加えても、その発がんリスクにほとんど差がなかったことです。
 さらに平山先生はこの集団調査結果から、「毎日飲酒する。」群が、非飲酒群に比べて胃がんや腸がんのリスクが低いことも明らかにし、われわれの実験の成果を支持しています。また、日本が進めるがん戦略10ヵ年計画の一環として、文部省の「がんレポート班」研究があります。現在継続中ですが、これまでの40歳以上の12万5760人を対象にしたがん死亡調査で、1987年から92年までの5年間における全死亡者2377人中、がんによる者は760人で、全がん、胃がん、肺がんおよび肝がん・肝内胆管がんすべてにおいて、毎日飲酒者のほうが非飲酒者に比べて、男女とも低いことが、中間報告ではあるものの、明白になっています。
 以上、述べたように日本酒は、心筋梗塞や肝硬変、肝がん、消化器系がんなどを予防する効果がある飲み物だということが分かりました。
 しかも、おかずと共に楽しみながら飲む”晩酌〃という日本酒ならではの飲み方は、健康効果と結びつく素晴らしい習慣。適正飲酒を守れば、大脳皮質を刺激してストレスを解消、心の緊張をほぐし、明日の仕事の能率を保証し、精神に活力を与えてくれるまさに”百薬の長〃といえるのではないでしょうか。

知っておきたい体にやさしい日本酒の効果
★日本酒の美容効果で色白・髪ふさふさ
 日本酒には、肌の兼白効果をはじめ、さまざまな美容効果があります。最近、話題のコウジ酸。これは米麹に含まれる有効成分で、細胞の老化を防ぎ、活性化する作用を持つ物質として注目を集めています。実際に化粧品、養毛剤や育毛剤などに使われるようになっています。化粧品の成分としてコウジ酸が使われた場合、シモやほくろの原因になるメラニンという色素の生成を抑える働きがあるため、美白効果が期待できるというわけです。しかも保湿効果もあるため肌はしっとり。また養毛剤や育毛剤を開発している化粧品メーカーでは、髪の毛の組織を増養してコウジ酸の育毛効果を検証。その結果、コウジ酸を含む養毛剤、青毛剤には、老化して発毛力が衰えた頭皮や毛根に働きかけ、育毛を助ける効果が確認されています。もともと日本酒には、血管に働きかけて血流をよくし、皮膚の新陳代謝を促す作用があります。これにプラスして、コウジ酸の作用で体の中だけでなく美肌や育毛に効果があるなんてうれしい限りですね。


★お相撲さんの肌がきれいなのは、日本酒が大好きだから
お相撲さんの肌がつやつやと輝いているのは、ふだんから日本酒をたくさん飲んでいるせい十相撲部屋の力士を対象に、飲んだお酒の種類によって体温がどのように変化するかを調ペた研究の結果です。これによると、日本酒を飲んだ時は他のアルコール飲料の時よりも長い間体温が2度ほど高い状態が続いたのです。 体温が高いということは、皮膚の表面の血液循環がよくなります。この状態が長く続けば、栄養分も体全体に行きわたります。お相撲さんの肌がきれいなのも納得できます。

★日本酒のヘルシー効果
@がん、A心臓疾患、B脳血管障害・・・これはここ10数年間の日本人の死因ワースト3です。では「3大不治の病」はというと、やはり@がん、A糖尿病、Bリューマチが挙げられます。日本酒や酒粕にほ、体に有用な機能成分が数多くあり、これらの「国民病」ともいえる病気の多くに効力を発揮することが、最近の研究でかなりわかってきました。その一端を列挙すると、
●糠康病を予防する
●がんを予防・抑制およぴ抵抗力をを予防する
●脳血管疾患を予防する
●高血圧を予防する
●健忘症を予防する
●肝臓病を予防する
●骨租しょう症を予防する
●アトビー性皮膚炎を予防する
●ストレスを軽減する
●老化を抑制する
●保温・保湿効果、美白効果、あれ肌の予防効果がある
●肥満を防止するなどがあります。
 健康を維持するためには、まず適量飲酒が重要であることを示したものに、英国のマーモットによるU字型死亡曲線というデータがあります。これは、禁洒や大量飲酒をする人に比ペ、小・中量の飲酒者のほうが、死亡率が低いことを10年間の統計で実証したものです。同様の結果が最近、国内外でも発表されています。 米麹という米の発酵物から有効な成分が溶け出したエキスとも考えられる日本酒には、まだまだ未知の部分が秘められているようです。今後の成果が待たれるところです。

★日本洒の健康効果はほかもあります
●抗パーキンソン病(L−DOPA)
●抗鬱癖(清酒酵母のS−アデノシルメチオニンの効果)
●精神安定効果(エチル−4−ハイドロキシン酪酸の効果)
●コレステロール低下作用(水不溶性繊維と水可溶性繊維、イノシトールの効果)
●アレルギー抑制(免疫グロプリンの生成のみを抑制するエポキシコハク酸誘導体の効果)
 など、研究中もしくはすでに科学的な裏付けのあるものだけでも枚挙に暇がありませ。日本酒の中には、数え方にもよりますが、数百種類の成分が含まれているといわれています。働きがわかっているごく一部の成分に、たとえばピタミンB1、B2をはじめとするピタミン類、多くのミネラルがあります。またペプチド(タンバタ質の構成成分であるアミノ酸が複数結びついたもの)や、必須アミノ酸なども含まれています。そして、体内で健康維持や老化防止を担う日本酒の働きは、大部分がアミノ酸から為り立っているペプチドの効果というこができます。ペプチドは、米タンバタを麹薗が分解し、アミノ酸になる間にできますが、結局のところ、麹のもつ力ということになります。麹がいかにかけがえのないものであるか、麹菌を使う日本酒は、世界でも類のないお酒だということがわかります。「やっぱり日本酒は百薬の長」であことを私たちはもっと認識する必要があるのではないでしょうか。

★食べてから飲む、食べながら飲む、「適量飲酒」が大前提
適量・適正を守って飲めば、日本洒は体にいいことは、いまや常識。では、「適量」とか「適正」とは何を指して言うのでしょうか。一般的には、「適正」は節度のある飲み方、「適量」は病気にならないための飲み方と定義することができそうです。「適量」といっても、世界中に研究データがあり、一概には言えませんが、日本人の場合、日本酒なら1〜2合、ビールなら大ピン1〜2本、ウイスキーならシングルで3杯程度が、−日の適量と考えられます。ただし、これには個人差があり、杓子定規には決められません。前もって自分の飲酒能力を知っておくのもも大事なことです。飲酒能力をはかる方法はいろいろですが、たとえば呼気法というのが比較的便利です。これは機械を使って、飲酒後の呼気中のアルコール濃度をはかります。酔う速さと、醒めやすさの組み合わせで、AA、AB、BA、BBの4ランクに分類されます。自分はお酒に強いと思っていた人が、これをやって、実は醒めにくく案外弱いことがわかったりする例もあるそうです。アルコールのとりすぎ、たとえば日本酒で5合以上を毎日飲めば、肝機能障専の発生頻度はかなり高くなります。また空腹のままだとお酒は胃からすぐ腸に回ってしまい、酔いが急に回ります。食ペてから、あるいは食ペながら、ほどよい量を楽しみながら飲めば、日本酒ほど健康の維持・増進にメリットがある飲み物はそうあるものではありません。

★日本酒のお風呂で血圧が安定
疲労感復に欠かせないお風呂。これに日本酒をれて入浴する酒風呂が、体をしっかり温め、血圧の安定にも役立つことが、実験でも確認されています。 普通、健康な男性は、入浴した後20分経つと血圧は平静時の状態に戻ります。ところが、日本酒風呂に入ると、湯上がり直後から最小血圧が下がり始め、20分経過しても、安静時より血圧が低い状態が保たれることがわかりました。ただ、これは37度というぬるめのお湯が効果的です。やり方は簡単。風呂のお湯にコップ2〜3杯の日本酒を加えてかき混ぜるだけ。市販の入浴剤など足元にも及ばない素晴らしい効果を発揮してくれるはずです。
日本酒造組合中央会「知って得する日本酒の健康効果」引用