チ  リ
フルーツの宝庫と呼ばれるチリ。葡萄の栽培にも、その気候風土は最適です。冬の数ヶ月だけに集中して雨が降り、晩春から夏の終わりまで乾燥する地中海性気候。更に葡萄の完熟期から収穫期に日較差15℃〜20℃となるチリ特有の気候。葡萄の栽培にはこのような気候風土は最適なのです。 また、南米大陸の西海岸にあり、東西90km、南北は太平洋に沿って4,350kmにも及ぶ細長い国土を持つチリは、北部を砂漠地帯、東に6,000km級のアンデス山脈、南は南極、西は太平洋に囲まれています。この地形と、アンデスの豊かな雪解け水が伏流水として灌漑利用される環境が、フィロキセラ(葡萄の根につく病気)などの害虫の侵入を許さず、農薬の使用が世界で最も少ない、汚染されない自然のままの豊かな土壌を産んだのです。 最近の、流行のなんでも「略して……」のひとつです。元は「チリ産のカベルネ・ソーヴィニヨン」。昨今の爆発的な日本のワインブームが生んだ言葉です。若者のトレンドは、魅力的な低価格、安定した高品質のチリ産の赤ワインでパーティーをすることだったんです。単一ワインがほとんどなので味を覚えやすいことも人気の秘密でしょう。 今、日本ではワイン需要の伸び率以上に、チリ産のワイン輸入が伸びています。それは単にブームにとどまらず、葡萄栽培、醸造、熟成の方法、それにワイン法に至るまで、高度な知識と感性でチリ国民が育て上げたワイン文化が日本の皆さんに理解していただけるようになった証でもあると思われます。ワインの中に含まれる酸化防止成分が「悪玉コレステロール」粒子の発生を抑止する働きがあると注目されています。この働きをおこなうのは、葡萄の絞り汁が発酵する過程で、薄皮と種からでるポリフェノール群と呼ばれるものです。その中でもフラヴォノイ ド群の持つ強い酸化抑止作用が人体にも吸収されやすいことが、スコットランドの研究者たちにより発表されました。そして、グラスゴー大学の科学者チームが、世界12カ国65種類の赤ワインを分析した結果、チリ産のカベルネ・ソーヴィニョンから作られたものに、世界最高のフラヴォノイド含有率があることが立証されました。栽培期間に日照時間が長く、晴天日数も多く、完熟してから収穫される、チリのカベルネ・ソーヴィニョンは、健康面でも世界最高の赤ワインであることを世界の科学者達が証明したわけです。 普段私達が当たり前のように吸っている酸素が、実はやっかいなものであるということを知っていますか?皮をむいたリンゴを放っておくと茶色く酸化するように、人体もまた酸素の影響を受けるのです。酸素というのは人体に生命を与えてくれるありがたいものである一方、生命を奪う働きもします。私達が摂取する酸素の1%は活性酸素とい う分子の発生につながります。この活性酸素というのは身体の細胞の老化を促し、ひいては人体そのものの劣化をもたらすのです。もちろん、人体の器官もただ黙っているわけではありません。活性酸素を拒絶するメカニズムを作りだすことによって均衡を保とうとします。 しかし、煙草・大気汚染・脂の多い食品など、現代の私達は身体にとって有害となってしまう環境に生きています。それによって、私達は自分の体がせっかく整えてくれた均衡を崩してしまい、活性酸素が病気を誘発するのに有利な状況を作ってしまうのです。そこで近年重要視されているのが、抗酸化物質を食生活に取り入れることなのですが、それに最適と思われるのが赤ワインです。約1年前、赤ブドウの種子の中に強力な抗酸化物質であるユベニット(Juvenit)がアメリカで発見されたました。これまでもワインが体に良いと言われてきました。ワインを多く飲むフランス人に心臓病が少ないことによっても説明がつきます。 その理由として挙げられているのが、ユベニットです。脂ものの多い食事をとるにもかかわらず、フラヴォノイドを含有するワインを大量に消費することで血液の循環を健やかにしているのです。もちろん、だからといってワインを大量に飲む必要はありませんが、体に気をつけるなら適量を意識的に摂取する必要があります。とりわけ歳を重ねられた人には老化を遅らせたり、病気の予防としてお勧めいたします。その他にも色々な医療的効果が徐々にわかってきています。健康にとって最も大事なのは、自分のライフ・スタイルをより快適に、より規則的に改善することではないかと思います。それが、グラス一杯のワインを食卓に置くだけで手に入るというのは言い過ぎでしょうか?
【歴史】
スペイン人の征服者によって16世紀半ば、チリに葡萄の樹が持ち込まれました。その宣教師達が宗教的儀式を行うためにワインが必要だったので、教会、修道院などの近くに葡萄の樹を植えたのが始まりです。 1851年、シルベストレ・オチャガビア・エチャサレタ氏がカベルネ・ソーヴィニヨンなどのフランスの貴品種をチリの土地に、植えたのを機会に、「ワイン・ルネッサンス」と呼ばれる飛躍的に、チリのワイン造りは発展して行きました。そして19世紀後半、ヨーロッパの葡萄畑を荒廃させたフィロキセラ禍のためにヨーロッパの醸造家や栽培家がたくさん南北アメリカに移住しました。彼らのうちの多くが葡萄栽培に最も適する土壌や気候条件が揃うチリにやってきました。1つの産業として確立した時期です。1877年、チリワインが初めてヨーロッパに輸出されました。1889年のパリ博などでその品質が認められ、評判も確かなものとないました。 20世紀に入り、二度の世界大戦の影響での厳しい法規制や、アルコール中毒患者の社会問題化からワイン醸造酒に高い税金がかけられるようになり、ワイン造りは一時低迷しました。醸造技術なども時代遅れとなり、生産される葡萄も生食用として輸出する方が利益が生まれる時代もありました。 1974年、1985年の自由主義的な法改正に伴いワイン産業が再び脚光を浴びるようになりました。人気の高い貴品種が新しい区域に植えられ、大きな経済力を持つ企業の参入により、大規模な機械化、生産効率化、最新の醸造技術の導入が始まりました。こうして生産される高品質なワインは世界の権威ある品評会で数々の名誉ある賞を毎年受賞しています。そして、それがチリワインに投資する諸外国の有名企業の増加という相乗効果も呼んでいます。 世界でも葡萄栽培に適した気候風土を持つチリは、こうして世界で最も素晴らしいワイン生産国のひとつに認められるようになりました。
【葡萄生産地域】
1.アコンカグア・ヴァレー
アンデス山脈から海に向い、国土を東西に横断するヴァレー。1,500〜1,800m級の 山々に囲まれた幅3〜4kmのなだらかな地形です。一年のうち240〜300日が晴れ という日照量の多さと、穏やかな地中海気 候で、葡萄の糖度上昇にはうってつけの条件です。
(年間降雨量250mm、栽培面積405ha)
2.カサブランカ・ヴァレー
沿岸平地で海風の影響を受けるヴァレー。遠方に丘陵地を望む海抜400m程度の穏やかな傾斜地、海風の影響もあり穏やかな気候に包まれています。
(年間降雨量450mm、栽培面積1,720ha)
3.マイポ・ヴァレー
貴品種葡萄栽培の歴史が古い地域。アンデス山脈から海岸線に向い国土を東西に横断 するヴァレー。東から西になだらかに傾斜した土地は変化に富んでいます。温暖で穏やかな地中海性気候。アンデスの麓の気温日較差は20度にも達します。
(年間降雨量330mm、栽培面積6,370ha)
4.ラペル・ヴァレー
海岸山脈がヴァレーの西側を南北に走ります。この山脈は標高500m未満で高い山はなく全体になだらかです。気候は地中海性気候だがやや湿度が高く、太平洋高気圧の影響を受けています。(年間降雨量710mm、栽培面積12,838ha)
5.クリコ・ヴァレー
東にアンデス山脈、中央平地、西側は海外山脈で構成され、これらが並行して南北に伸びています。畑は主に中央平地と海岸山脈寄りにあります。やや湿潤な地中海性気候で、太平洋高気圧の影響を受け、夏の気温日較差は15度前後です。
(栽培面積11,871ha)
6.マウレ・ヴァレー
西側が海岸山脈、東側がアンデス山脈で、南北に長くなだらかな傾斜した地形です。やや湿潤な地中海性気候。冬の雨は多めだが、その後は日照に恵まれた高温乾燥の天気が続きます。夏の気温日較差は15〜18度。
(年間降雨量730mm、栽培面積16,996ha)
7.リオ・イタタ・ヴァレー
8.ビオ・ビオ・ヴァレー
サザン・リージョンと北部のリマリー・ヴァレーには都合13,216haの葡萄畑があリます。